
“ママが自分らしく過ごせるお出かけ先を作りたい”と、勤めていた会社を辞め、親子向けレンタルスペースを開業した中口ゆきさん。開業の経緯から子育てとの両立、走り続けるゆきさんの根底にある想いまで、たっぷり伺った内容をインタビュー形式でお届けします。
約9年間勤めた外資系IT会社を退職し、2024年12月にプライベートキッズスペース「むすびばな」を開業。保育あそび発達サポーターとして親子向けイベントや講座も開催している。5歳の男の子と3歳の女の子のママ。
会社員としてある程度スキルがついたタイミングで、自分のスキルを活用して、自分やその周りの人たちが抱えている悩みを解決するために、自分の時間を使いたいと思ったからです。
きっかけは第二子の育休中。私の人生を大きく変えた出来事がありました。当時2歳だった長男を保育園留学に参加させるため、家族で長野県上田市に2週間滞在。そこで出会ったのがプライベートサウナでした。大人はサウナを楽しめて、子どもも周りの目を気にせず過ごせるプライベート空間を初めて利用し、「ここならママの私も。私らしく過ごしていいんだ」と思えたのです。
また別の日、子どもとカフェへ行った時、キッズスペースで長男がおもちゃの取り合いをしてしまいました。仲裁に入ると息子は泣きわめき、私は食べたかったマフィンを残してお店を出ることに。周りの目や「良いお母さんでいなければ」という思いにとらわれてモヤモヤする中、貸切空間なら子どもは好きな遊びに集中でき、ママもハッピーでいられるのではないかと気づいて。親子のためのプライベート空間を作ろうと事業計画書を書き始めたのがスタートでした。
目指したのは、ママが心からリラックスできる空間です。内装は木をメインにし、床材には奈良県産のヒノキ、壁は漆喰を使用。素材には一切妥協せず、本物を使うことにこだわりました。
<ママのためのリラックススペース >
親子で過ごす時間が少しでも楽になるようにと、おむつ替えスペースや授乳室も用意しました。トイレは子ども2人連れでも入れるように広めに設計し、手洗い台は小さい子も手が届くように長めの蛇口に。ママ向けのフリードリンクも用意し、コーヒーや紅茶、ハーブティーなど各種そろえました。
親子で過ごす時間が少しでも楽になるようにと、おむつ替えスペースや授乳室も用意しました。トイレは子ども2人連れでも入れるように広めに設計し、手洗い台は小さい子も手が届くように長めの蛇口に。ママ向けのフリードリンクも用意し、コーヒーや紅茶、ハーブティーなど各種そろえました。
おもちゃは私が「あ、かわいい」とときめいたものを置いています。ママが「これ、かわいい。どうやって遊ぶんだろう」と興味を持ってくれるようなものなら、子どもともっと楽しく遊べそうだなと思って。さらに、いろいろなお子さんに楽しんでほしいという思いから、発達の多様性に応じたあそびを提案する「保育あそび発達サポーター」という資格も取得しました。店内には子どもの認知特性(視覚優位・聴覚優位・言語優位)に合わせたおもちゃをバランスよく置いています。
資金調達です。初めは地方銀行などへノーアポで行くも撃沈。その後、日本政策金融公庫で借りられると知って、融資に挑戦することに。事業計画の説得力を高めようと市場調査やママ向けのアンケートも行いました。全部で50ページにもなる資料を提出した結果、満額での借り入れが決定。本当にうれしい瞬間でした。
実は、工期が遅れるというアクシデントもありました。私自身、学生時代に建築を学んだのですが、特に施工現場が大好きで。「むすびばな」の施工現場にもしょっちゅう行って大工さんと話したりしていたら、施工会社の方から“工期に遅れが出ています”と連絡がきて。しばらく出禁になってしまいました(笑)
開業1年で想像以上に多くの方々に来店いただいています。もともと大阪・豊中市近隣のママ向けに立ち上げたのですが、最近は京都や神戸など遠方から来られる方も増えています。近くに「むすびばな」のような親子向けプライベート空間がほしい、という声もたくさん聞きますね。
様々な地域から来てくださるママとお話をする中で、ママの悩みは全国共通だと思うようになりました。「むすびばな」の店舗を増やしたいという密かな夢もあるのですが……。まずは子ども一人ひとりの発達に合った遊びや声かけを提案する「保育あそび発達サポーター」としてのサービスから、全国へ展開していきたいと考えています。
子育てとの両立はいつも悩みます。納得いくまで仕事をしたくても、子どものお迎えで中断し、寝かしつけてからの深夜や朝早くに続きをすることも。仕事も子育ても両方完璧にこなすのは難しいので、子育ての面では寝る前に絵本を読んだり、送迎の時に一緒に歌ったり、子どもが好きなテレビ番組を一緒に見たりと、小さな積み重ねをしています。子どもとのちょっとした約束は必ず守るようにしていますね。家事は家電に任せたり、料理が得意な夫に頼ったりすることも。家事代行サービスを利用する日もあります。一日24時間という限られた時間の中で、仕事も子どもとの時間も大切にしながら、続けてきた一つひとつが今につながっていると感じています。
私が人生をかけて取り組みたいことは、“ママがママという役割を超えて自分らしく生きることができる社会の実現”です。「むすびばな」でつくり上げたママが子どもと安心して過ごせる空間を、社会全体に広めたいと考えています。ただ、そのビジョン達成は本当に難しいこと。ママに対する社会の厳しい目が急に変わることはありませんからね。簡単には叶えられない目標に向かっているからこそ、ずっと追いかけ続けられるのだと思います。
ママという役割にとらわれず、ワクワクする気持ちを忘れないでほしいと思います。少しでも好きなことに時間を使って、ママになっても自分らしい道を歩んでくださいね。
この記事を書いたのは
ライター
Haruko
大阪・北摂在住のママライター。地域の子育て情報誌やWebサイトなどで執筆活動を行っている。鉄道大好きな7歳長男と、茶目っ気たっぷりな4歳次男の育児に奮闘中。