
託児事業「ラク育」を立ち上げ、ママやパパが一人で抱え込まない、「頑張らなくて良い子育て」の場を広げている奥山星奈さん。 自身の育児経験から生まれたその取り組みと、“頼っていい”社会への想いを伺いました。
沖縄出身、二児の母。0~1歳育児の孤独さと「頼れる人の不在」を身をもって経験し、2024年に子育て支援拠点「ラク育」を立ち上げる。“断らない”“気楽に頼れる”を軸に、一時預かりとカフェを掛け合わせた場を運営。保育士が家庭と両立しながら働ける働き方づくりにも取り組む。
子どもが0~1歳の頃の私は、頼れる人も少なく、心に余裕のない日々を過ごしていました。
そんな中、上の子を抱えながら妊娠8ヶ月のお腹で保育園に延長をお願いしたら、「産休中なので4時までです」と告げられました。その日はお腹が張り、今すぐ産婦人科に行く必要があるのにです。20キロ近い子どもと荷物を抱えたまま、途方に暮れたあの夕方。助けが必要な時ほど頼れないーその経験が、ラク育の原点になりました。
一時預かりは当日利用がほとんどできず、勇気を出して電話をしても「今日は難しいです」の繰り返し。まるで「ひとりで育てなさい」と言われているように感じました。だからこそ私は"断られない場所”をつくりたかったんです。ラク育は、必要なその日、その瞬間に頼れるpopup型の託児所です。事前登録や予約が前提ではなく「今日、助けてほしい」そんな気持ちに応えられる場所でありたいと思っています。カフェの併設を考えたのも、親子だけで閉じない、地域と自然に交わる場をつくりたかったからです。頼れる相手の選択肢は、多ければ多いほどいいーそれが、あの頃の私が一番求めていたことでした。
ある日、当日の託児サービスに予約が入りました。お子さんを連れてきたママは明らかに体調が悪そうで、「夫は仕事で、子供を見てもらえなくて…今すぐにでも横になりたい」と話しているとスタッフから連絡が入りました。住所が徒歩圏内だと分かり、「それなら…」と考えた末、「お子様をご自宅までお送りしましょうか?」とオプションとして提案することにしました。
”今、この人に必要なことは何だろう”と同じ母親として自然に出た判断でした。その提案に、ママは「いいんですか?」と何度も聞き返すほど喜んでくれて。ラク育が大切にしているのは、決められた対応ではなく、その人の“今”に寄り添うこと。そんな小さな気づきの積み重ねが、この場のあたたかさをつくっています。
ラク育では、企画のひとつとして”ママパパデートナイト"も実施しています。ご飯やお風呂をこちらで済ませる日もあり、ほんの数時間でも体験した夫婦の会話の質が変わるのを感じます。
これは「夫婦の時間も育児の一部だよ」という、私自身の実感から生まれた企画です。「あの日感じた孤独を、他の誰にも味わわせたくない」。その思いだけは、ずっと変わりません。一人で背負わず、子育ての時間そのものを楽しんでほしい。ラク育は、今日もそのための安心を灯し続けています。