
第一子は自然妊娠だったから、二人目も「そのうち授かる」と思い、気づけば5年が経過。仕事との両立、治療にかかる費用、繰り返す期待と落ち込み。簡単ではなかった10か月間を経て、私が感じたのは「もっと早く行動すればよかった」。気になるけどなかなか聞きづらい不妊治療のリアルと心の揺れを、体験をもとに紹介します。
第一子を出産したのは2017年(当時34歳)。夫とは「2人目は欲しい」という共通認識がありましたが、具体的な時期は決めておらず、日々の忙しさに追われて5年が経過。第一子が自然妊娠だったため、「そのうち妊娠できるんじゃない?」という根拠のない自信がありました。5年も経っているのに「不妊」とは捉えておらず、今思えばお気楽なものです。 周囲でも不妊治療を受けている友人が多かったこと、2022年4月の不妊治療保険適用化したことをきっかけに、不妊治療を検討するようになりました。 「不妊治療は最後の手段として考えられがちだけれども、いつまでに何人子どもが欲しいのか、なぜ子どもが欲しいのかを早期に考え、それを実現するために不妊治療を選択肢の一つとして持って欲しい」 不妊治療専門クリニックの院長の言葉にも背中を押されました。
カウンセリングでは、妊娠の仕組み、年齢とともに妊娠率が低下することなど詳しく教えていただきました。禁欲日数や飲酒・喫煙の影響など積極的に質問する夫の姿に、安心したのを覚えています。治療が始まるとどうしても女性に負担が偏るので、最初のカウンセリングに夫婦で参加できたのはとても良かったです。
年齢や妊娠率を考慮し、何より早く第二子を授かりたいという気持ちから、人工授精から始めることになりました。当時、私は38歳、夫40歳。「治療」という言葉とは裏腹に、暗闇の中で「第二子への階段」があらわれたようで、ワクワクしたのを覚えています。
治療を始める際の不安は、費用、そして仕事との両立でした。不妊治療をきっかけに仕事を辞めたり働き方を変えたという話を聞くことも多く、フルタイムで働きながら治療できるのか、漠然とした不安がありました。 参考までに、月の通院回数は以下の通り。(個人や治療により、通院回数は異なります)
6月:3回(人工授精)
8月:5回(人工授精)
9月:4回(人工授精)
10月:3回(人工授精)
11月:1回
12月:5回(体外受精)
1月:2回
2月:6回(2/14に妊娠判定)
3月:3回
クリニックの滞在時間は1時間ほど。内診だけ、注射だけなど30分ほどで終わる診察もありました。生理が来た5日以内(体外受精の場合は3日以内)に通院しなければならないため、生理予定日周辺はスケジュールが読めず、打ち合わせの日程変更やキャンセルが生じたことも。ただ、診察の待ち時間はデスクワークをしていたため、仕事が大幅に滞ることはありませんでした。
会社の同僚にも不妊治療を始めることを話し、理解・応援してくれる環境だったため、大きな問題なく両立できました。基本テレワークで融通がききましたが、打ち合わせが多い方や通勤、シフト制の仕事の方は、突発的なスケジュール調整に苦労するかもしれません。何より、周囲の理解がないと、休むことへの罪悪感から精神的に辛い思いをすることもあるかもしれません。
人工授精は、精子を膣内に入れる施術で痛みは全くなく5分ほどで終了。「もう終わりですか?」とあっけに取られたほどです。費用は1周期で1万5000円〜2万円ほど。「不妊治療=高い」というイメージからすると、経済的負担はかなり少ない印象です。
体外受精1周期の費用は、採卵、採血、注射、薬、受精など含め約25万円。人工授精と比較すると費用的なインパクトは大きいですが、どうしても第二子が欲しい、治療を長期化したくないという思いから、迷わずステップアップを選択しました。
幸運にも1回目の体外受精で妊娠。妊娠後の診察や薬代も含め、不妊治療をした10ヶ月間でかかった費用は約35万円です。決して安い治療ではありませんが、保険適用で負担額は軽減されています。何より、自然妊娠にこだわり続けていたら第二子を妊娠できなかったかもしれない。そう考えても、必要で価値のある投資でした。
仕事が忙しい月は治療を休む、大好きなお酒は控えめに、だけど我慢はしない、といったようにできるだけストレスを溜めないよう心がけました。
それでも4ヶ月、5ヶ月と経つにつれ、生理が遅れるたび期待して落ち込んでを繰り返し、「あと何ヶ月続ければ良いんだろう。もしかして妊娠できないのかな」と、クリニックのトイレや自宅で涙したことも一度や二度ではありません。
人工授精では身体的負担はほとんど感じませんでしたが、体外受精にステップアップしてからは辛さを感じることが多かったです。錠剤と膣剤の薬を毎日3回決まった時間に摂取しなければならず、外出時や長時間の仕事の際は時間通りの実施が難しかったです。自分でお腹に注射をする必要があり、最初は憂鬱でしたが、想像していたほどの痛みはなく次第に慣れました。
採卵は全身麻酔で行ったため痛みはありませんでしたが、夜に激しい腹痛が発生。ちょうど夫がおらず、市内に住む実家の母にわんぱくな5歳男児の相手を要請しました。
不妊治療を続けるにあたって、女性はストレスや不安を発散させることが非常に大切。診察の後は美味しいご飯を食べたり、気持ちが落ち込んだ時には気分の上がる花を買うなど、メンタルケアを心がけました。後半は落ち込むことが多く、リビングが花と観葉植物で溢れました。
夫は最初はやる気も協力体制も万全でしたが、時間が経つにつれしりつぼみに。男性は通院する必要がなく施術もないので、どうしても当事者意識が薄くなります。とはいえ、通院のため仕事を調整するのも、注射や施術の痛みに耐えるのも女性。「なんで私だけ」とストレスや苛立ちを感じてしまうのは不可避です。だからこそ、男性もできる限りカウンセリングや診察に立ち会うなど、夫婦としてどんな治療に取り組んでいるのかを理解して寄り添えると良いですね。
ひとつの命が宿るのは本当に奇跡のような出来事です。「年齢的にまだ早い」「結婚したばかりだから」と考え、不妊治療を最後の手段と捉えている人は少なくないと思います。私自身、もっと早く行動すればよかったと何度も後悔しました。
"いつか"子どもが欲しいと考えている方は、なるべく早く自分の身体について知っていただくこと。そして、作り上げたい家族の形から逆算して、様々な選択肢を持っていただきたいと心から思っています。